【レビュー】Cervelo S5 2018 RIM【エアロだけで突き進めるモンスター】

こんにちは、コウです^^

それでは今日も元気よくやっていきましょう!

本日のテーマはこちら。

 

【レビュー】Cervelo S5 2018リムブレーキ【エアロだけで突き進めるモンスター】

こういうテーマでやっていこうと思います^^

ブログに初めて登場してから随分と登場の機会が多い、Cervelo「S5」

登場させて以来まともなインプレッションを書いていませんでしたので、シマノ鈴鹿ロードレースが終わった今、ここらで一つ挟んでおこうと思います^^

 

今「Cervelo」と聞いて出てくるワールドチームは「VISMA | Lease a bike」ですね。

でも私は「Dimension Data」なんですよ^^

このフレームは、今年のツールドフランスで35勝と、最多優勝記録で単独トップに立った「マーク・カヴェンディッシュ」が乗っていたのと同じ型なのです。

いつかは必ず乗りたい!とずっと思っていたフレームです^^

その価格、当時の定価でなんと70.2万円!!

当時のS-WORKS VENGE ViASやDOGMA F8でももう少し安いくらいなので、いかにCerveloが高値を付けているかがよく分かります^^;

そんなバイクが、この仕様で半値の価格でやってきたのです。

年式は2018年モデル。

中古ですが、結構綺麗な状態でしたよ。

それから早3ヶ月。

シマノ鈴鹿ロードレースをこの写真の状態で走りました。

非常に堅実なパーツ構成です。

 

2ヶ月弱でここまで変わりました。

色々と変化していますが、まだ変えたいパーツがあります。

どこがどう変わったか、テスト中のパーツインプレも含めて後日まとめます^^

 

 

ところで、Cerveloのバイクってぱっと見どれも速そうに見えませんか?

私は平坦寄りの脚質故にSシリーズに目を奪われることが多いんですが、傍から見るとめっちゃ速そうに見えます。

ですが、実際のところ果たしてどうなのか?

ペラペラ一枚板みたいな、縦横のバランスが悪かったりしないか?

傍から見ていると、やはり色々気になる部分が多いことと思います。

私も買うまではそうでしたから。

ということで、せっかくお金出して買っているので、良いところも悪いところも全部を包み隠さず公開します!

ぜひ参考にしてみて下さい^^


【ユーザーフレンドリーなエアロロード】

まず、S5を単なる一自転車として見た場合の印象です。

メンテナンス、パーツ交換などカスタムする場合において、何某の障害が無いかを見ていきます。

色々なフレームを触ってきた経験から、S5は

「ユーザーフレンドリー」

一言で表現するとこうなります^^

一見奇抜な見た目ですが、細部を見るとちゃんと考えられている部分が多いです。

その一例をご紹介します。

一般的なキャリパーブレーキが使える

こんなフレーム造形でも、ちゃんとシマノのキャリパーブレーキが使えるのが良いところです^^

リムブレーキのエアロロード末期の頃は、メーカーオリジナルの専用パーツで組まれたフレームが多くなりました。

VENGE ViAS然り、MADONE然り。

この手の専用ブレーキって、とにかく構造が複雑になりがちです。

そして、往々にしてシマノ純正キャリパーブレーキより効きも悪い例がほとんどです。

そこを上手に設計し、シマノのキャリパーブレーキを使える状態にしてくれたCerveloの設計者には脱帽です。

リアブレーキをシートステーに配置しているのもポイント高いです^^

今はどこもかしこもディスクブレーキでエアロロードを作っているので差が無いですが。

S5の前に乗っていた「BMC TMR01」なんかこれですからね(笑)

これはこれで良かったのですが、結構メンテナンスが大変でした・・・。

ブレーキだけは汎用品に限ります。

エアロ効果があるのか分からないシフトケーブル

一時期このスタイルが流行りましたよね!

こんな感じの取り回しをしているのって他所さんだとMERIDA、GIANT、3T、あと穴場ですがアメリカのBLUEくらいしか見たことないです。

横から見るとこんな感じ。

取り回しを間違えたら、トップチューブの中を通っていきそうで不安になります・・・。

でもご安心を。

このグロメットの中には、ダウンチューブへインナーワイヤーを導くためのライナーが通っています^^

なので、普通にグロメットへインナーワイヤーを通すだけでちゃんと組めます。

クリップで外せる、BB裏のケーブルガイド

トップチューブのグロメットから入ってきたインナーワイヤーは、ここへ出てきます。

このケーブルガイドが付くのですが、これがまたよく考えられています^^

 

左側、フロントディレイラーへ伸びるワイヤーが通る部分が縦に切れていますね。

実はクリップになっており、爪で簡単に外せる構造なんです!

パチッと嵌るので簡単に取れないのと、ワイヤーのテンションがかかるのでまず落下はしません。

FOILは無理矢理こじらないと、このパーツが取れない構造です。

何気にゴミが溜まりやすい部分だから、定期的な掃除が必要なだけあって、ちゃんと考えられています^^

 

 

以上、メンテナンス性という点から見ると、なかなか良く出来たエアロロードであると私は思います。


【前乗りライダーにはあまりに酷なジオメトリー】

前章では、ユーザーフレンドリーなところが売りであると紹介しました。

ですが、S5のみならずCerveloのロードフレームには、とんでもない落とし穴があります。

それは、ジオメトリーです。

現行のS5とR5のジオメトリーを並べました。

シートアングルの項目を見てもらうと分かるんですが、シートアングルが全て「73度」になっています。

これが非常に厄介なのです。

少し脱線しますが、フレームを買い替える際、皆さんはどの項目を重視しますか?

私の場合、以下の4ヶ所を特に重視しています。

  • スタックハイト(ハンドルの高さに直結)
  • リーチ(ステムの長さに直結)
  • BB下がり(ダンシングのイメージに直結)
  • シートアングル(サドルの位置に直結)

なぜこの4点なのかというと、この4点さえ見ていればポジションが出せるか判断可能だからです。

とはいえ、よっぽど奇抜なジオメトリーで設計しているメーカーでもない限り、170センチ前後の人が乗るサイズですと、だいたい49~52サイズ、XSかSサイズくらいになります。

エンデュランスかレーシーかで細かいところは変わるものの、同じ系統のフレームなら各項目の数値も似たり寄ったりです。

なので、基本的に同じポジションにしようと思ったら、スタックハイトとリーチ、BB下がり、シートアングルに注意すれば良いわけです。

昔からの相棒であるSCOTT「FOIL」

この写真からも分かるように、私はサドルを前に出しています。

サドル高はシートチューブのラインに沿って「685ミリ」

ショートノーズサドルを使った状態で、セットバック40ミリです。

また、XSサイズのこのフレームのシートアングルは「74.5度」

ちょっと立ち気味ですが、この角度のおかげで理想のポジションが出ていると言っても過言ではありません^^

ところが、S5は初代から一貫してシートアングルが73度なのです。

シートアングルが1.5度変わると、サドルレール位置=クランプの高さで実に15ミリものずれが生じます。

10ミリまでならサドルのレール長を目一杯使いきって対応可能なことが多いですが、15ミリを超えてくると一般的な前後スライド量のサドルでは到底ポジションの再現ができません。

シートポストは斜めに挿入されるので、サドル高さが下がればスライド量は多少緩和されますが、それでもシートアングル73度の場合、10ミリ下がって3ミリ前に出る程度です。

一般的な27.2ミリ径などの丸断面シートポストなら、やぐらのオフセットが前に出ているモデルを使えば回避可能です。

S5は専用設計のシートポストなので、それすらもできません・・・。

実は当時のS5に付属してくる「SP17」であれば、何も問題なく前に出せるのです。

ただ既にこのシートポストは廃盤で、今は「SP20」が使用されています。

SP20のポスト部分は、新Sシリーズは全世代共通設計なので使えます。

ただこのシートポスト、やぐらがごついんですよね。

どこの世界に、レール長を全部使ってクランプするシートポストがあるのか。

こうなった場合の対処法は2つ。

  1. レールが長いサドルに交換する(合わなくても我慢)
  2. SP17シートポストを血眼になって探す(笑)

 

そこで、シマノ鈴鹿ロードレースまでになんとかポジションを出すべく選ばれたのが、トレック傘下のBONTRAGER「VERSE SHORT」

これでようやくポジションが出たわけです。

ただ、不満が無かったわけではありません。

元々がエアロフォームよりもアップライトな姿勢をベースに考えられたサドル形状なので、後ろに座った時に上体が起きようとしてしまうのです。

当時は慣れで乗れていましたが、今思えばやはり深い前傾を取りにくかったんだなと。

だからステムも、アップライトなフォームになるステムを使おうとしていたんだなと。

そう考えています。

そしてここに行き着くまでに、大量のサドルのゴミの山ができたのですが、それはまた別のお話・・・。

「VERSE SHORT」はこのどれよりも、ポジションが出ていたのは間違いありません。

 

 

そして月日は流れ、

 

 

 

 

SP17シートポストがS5にささっています(笑)

Sシリーズに乗るからにはなんとしても欲しい!
と渇望したシートポストだったので、なんとか探し出しました^^;

サドルも少しレールが長めなショートノーズサドル

Prologo「ディメンションCPC」

に交換しています^^

余談ですが、このサドルは個人的には当たりなサドルです。

もっと早く買っておけば良かったと少し後悔しています。

まあそんなディメンションでもこれだけ前に突っ込んでいますので、いかにポジション出しに苦労するフレームかお分かりになりますでしょうか。


【S5を組み上げた上でのプロコンをまとめる】

と言うわけで、色々書きましたが、ここからは組み上げ時点」でのS5の良いところ、良くないところをまとめていきます^^

あくまでも組み上げ時点でのお話です。

実走はまた後ほど書きます。

ここがイケてる!

  • シマノ製キャリパーブレーキが使える
  • 専用ハンドル、ステムじゃないので汎用性が高い
  • 機械式でも普通に組めるしきっちり変速する
  • 意外と軽い(フレーム単体で1000g未満)

やはりシマノのキャリパーブレーキが使えるのは大きな強みです^^

TMR01の専用Vブレーキも悪くなかったですが、急坂を下る時は制動力がもう少し欲しいと感じていました。

それにブレーキが撓むのか、特にダウンヒルですと急にけたたましい音鳴りが発生することもありました。

それが無いのは、ひとえにシマノのブレーキのおかげかと思っています^^

 

また、エアロロードとしては特別なパーツを使わずとも結構軽いです。

と言いながらクランクがカーボン化していますが。

この状態で7.5kg

ホイールが前後で違いますが、後輪のみレベルアップの修理に出しているため、メトロン55SLにしています。

前後チューブラーホイールに換装するなどで軽量化の余地は残しているので、ヒルクライムレースやアップダウンのあるコースにも平気で持ち込める重量に仕上がっています^^

ヒルクライムレースに出る予定はありませんが(笑)

ここがイケてない…

  • サドルがやたら後ろにいくため、お気に入りのサドルでも諦めないといけない場合がある
  • リーチがレースバイクとしては短め
  • 専用シートポストが下がりやすいため、締付けトルクの管理が難しい
  • BBRight用のスレッドフィットBBを付けるためには専用工具が別途必要

 

致命的なのは、シートアングルから来るサドルの後退量の多さ。

アングルはフレームの造形で決まってしまうため、こんだけシートチューブが寝てしまうとシートポストを加工してどうのこうのという小手先では解決できません。

Sシリーズのフレームは前乗りしたい方や、体格上前にサドルを出さないといけない方にとっては、凄く扱い辛いフレームです。

所有してみないと分からないことですが、サドルからペダルまでのスペースは動力ラインの要である以上、こういった制約事があるのはフレーム設計としては重大な欠陥だと私は考えます。

女性ユーザーでS3に乗っている方を見ましたが、どうやってポジション出ししたのか凄く気になるところです・・・。

 

この手のシートポスト形状でよくある弱点が「ずり落ちやすい」こと。

S5のシートポストは近年稀に見るレベルの超翼断面形状なので、シートクランプを締め込んでも実際に強く圧がかかるのは、クランプと反対側の面だけです。

側面はトルクの方向に対しほぼ平行ですので、圧があまりかかりません。

そんな構造だから、普通の丸シートポストトルクで締めていると、ダンシングから一回腰降ろすだけで簡単にずれます。

私の場合ですが、ここに関してはトルクを無視し、シートポストがずれなくなるまでトルクをギリギリまで上げて固定しています。

そうしないと、何のためにポジション出ししているか分かりませんしね^^;

 

そして過去に投稿した、BBの問題。

BBRightはシェルの内径が46mmと、スレッドBB(BSA、ITA)やBB86などより大きいため、BB自体が大きくなります。

私はスレッドフィットBBであるTOKEN「BB46BR24」を付けているので、専用の工具が必要になりました。

通常のシマノのBB工具ではなく、パークツールの工具を買いました。

両側から締める構造なので、これが家に2個あります。

詳しくはこちらの記事をどうぞ。

「ユーザーフレンドリー」と表現しましたが、BBはそうでもないポイントです。

 

 

とは言えですよ。

走ってみてフィーリングが良ければ、万事OKなわけです^^

ロードバイクとしてどうなのか?
満足いく走りが出来るのか?

その辺をインプレッションしてみようと思います^^


【Cervelo S5インプレッション! エアロ効果は凄まじいが・・・】

という事で、S5の実走インプレッションに参りましょう^^

過去のインプレの通り、大会、トレーニングの両面で走っております。

ホイールはメトロン55SL、のむラボホイール2号、そして秘密兵器ホイールで走行しています。

 

結論から先にお伝えしましょう。

  • 見た目に反して普通の乗り味
  • エアロ至上主義 平地と下りが馬鹿みたいに速い
  • ハイエンドモデルの割に硬さと反発は弱め
  • コーナリングの切れ込みは良好
  • フロントはカッチカチ リアバックが柔らかくアンバランスで急加速が苦手

このような印象になりました^^

見た目に反して普通の乗り味

まずこの時点で驚きを隠せませんでした(笑)

こんな見た目で、FOILからなんら遜色なく乗り換えができるのです。

造形的に剛性の過多や不足が出やすいところですが、そのネガを上手に潰しているのが素晴らしいです。

高負荷のダンシングになると剛性バランスの悪さが顔を出しますが、それは後述。

でもこのTTバイク然とした見た目で、普通のロードバイクとして走れるのです。

創設時からエアロロードを作り続けているだけのことはあるなと。

 

とはいえ、やはり見た目なりのネガもあります。

それは、前三角と後ろ三角の剛性感の違い。

これについては後述します。

 

段差の越え方やギャップの通過に関しては、エアロロードらしい微振動と突き上げが来るのは否めません。

ですがそれでもFOILと同じくらい、TMR01よりは優しいですね。

クッションがやたら厚い「VERSE SHORT」の恩恵を考慮しても、割と座りっぱなしで走れる程度には優しめな印象です。

エアロ至上主義 平地と下りがお世辞抜きに「馬鹿みたいに」速い

非常に端的に申し上げて、S5は上り以外のステージにおいては本当に速いです。

足回りにバイクがいるわけですが、その辺りの空気抵抗をあまり感じない、と言った方が良いでしょうか。

丁度先月のシマノ鈴鹿が良い例でしたので、それを引き合いに出します。

昨今のロードレースは、パワーメーターの普及とエアロダイナミクスの向上により、平均速度が上がっています。

シマノ鈴鹿ロードレースも例に漏れず高速化しており、シケイン越えてデグナーに向かう下りや、S字の下りでは55~60キロで走ります。

数年前は上がっても60キロはいくものの、全体に渡って1~2キロほどペースが緩かったです。

 

で、当時から去年にかけて、シマノ鈴鹿はFOILで走ったわけです。

FOILは50キロを越え始めると、下りでも常にペダリングし続けないと付いていけません。

昨年は身体の仕上がりも含めてダメダメだったので一律比較できませんが、数年前ならそんなに踏まなくても良かった区間でも300Wとか出していかないと、集団に置いていかれかねないくらい速くなっていました。

 

そこから、今年のシマノ鈴鹿に焦点を当てて、S5で出たわけです。

昨年より脚を休められる時間が明らかに増えました^^

レース時の速度自体は昨年同様、高速であることに変わりはありません。

にもかかわらず、脚を止められる。

これがフレームの空力性能の差であることは明白です。

こんなフレームは初めてです。

TMR01でも、下りでここまで脚が止まったことはありませんでしたから。

ハイエンドモデルの割に硬さと反発は弱め

先に断っておきますと、「剛性感」と「数値上の剛性」は別物です。

ラボでのテストで「他社のハイエンドモデルより〇〇%もたわみに強いです!受け止めた力は全てロス無く駆動に変換されます!だから速いんです!」みたいな謳い文句を掲げるメーカーは未だにあります。

もちろん比較対象が柔らかすぎるフレームであれば、第一印象どちらが良いかは「硬いフレーム」と答える人は多いでしょう。

私もそうです。

ですが、大事なのは「その人のペダリング、乗り方にとって扱いきれる剛性感か?」です。

ここを混同してはいけません。

そんなS5ですが、剛性感は実際のところどうなのか?

 

色んなシチュエーションで乗ってみた結論として、脚が弾かれる感覚はほとんどありません。

私は平地を主戦場とする割には、巡航に関してはあまり得意ではありません。

一番走れていた時でも、FOILで40キロを数分キープなレベルです^^;

当時のFTPは分かりませんが、現時点では230~240Wほどです(岐阜県 二ノ瀬での実測値)。

そんな私の脚で巡航しても、さらなるペースアップのためにもう一踏みの融通が利く、ギリギリのところで踏み切れる絶妙な塩梅なんですね。

FTPが300W超えるような人なら、延々踏み続けられるであろうくらいの剛性感ですね^^

 

そしてこの剛性の塩梅は、特にヒルクライムにおいて有意に働きます。

景勝地であり、東海地区のサイクリストにとっては聖地とも呼べる「二ノ瀬峠」があります。

ここですね^^

三重県側と岐阜県側で斜度が全く違う峠道で、土日になるとサイクリストがひたすら鍛錬を積んでいます。

20~30分ほどで上れる峠なので、FTP計測をするにオススメなコースです^^

私はクライマーではないので、長時間4倍も5倍も出し続けられませんが、過去FOIL、TMR01、S5の3台でこのコースを登っています。

ベストタイムがまさかのS5。

FOILの時もTMR01の時もカーボンチューブラーで登っているので、機材面でのビハインドは無いです。

それだけS5が踏み続けられるバイクであるということです^^

エアロロードの癖にクライミングも速いってどういうことやねんって話ですけどね(笑)

 

ただし、スプリンターが満足する剛性か?というと、正直微妙です。

ミドルクラスのFOILでも、クライミングの山頂でスプリントする時などでは脚が弾かれるくらい硬く感じる時があります。

でもこれって逆手に取ると「ここで踏む」という足裏からの感触が分かりやすいことの証明でもあります。

だからスプリントには、硬いフレームが良いのです。

 

一方でS5の場合、頑張って食らい付いて、さらにもう一回踏み直すシーンがあったとしても、硬くて踏めないことはないです。

代わりに、スプリントしても「ここで掛かっている」感が希薄。

スプリントトレーニングする機会は多いですが、S5ほどかかりが薄いフレームは初めてです。

出力をコントロールするのは難しいですが、瞬間的に1200Wくらいを超えてくると、リアがぐにゃっている感触が顔を出します。

なんでそんな感触が出てくるのか?

その考察を後ほど行います。

 

余談ですが、S5はホイールとの組み合わせ次第では、スポーク比重が軽いホイールを使うと、その薄まった感覚が完全に消えてしまうことになるやもしれません。

例えば、昔インプレッションしたLUN「HYPER 2023」

金属スポークですと、CX-RAYを後輪に使ったホイールなど。

CX-RAYを使った完組ホイールが最近多いですが、値段の割にCX-RAYって万能スポークではないのです。(私も最近この事実に気づきました)

共通するのは、「スポーク自体の変形剛性」

スポーク1本の重量が重くなるほど、本数が増えるほど、硬く、掛かりの良いホイールに仕上がるのはホイール組みの基本です。

カンパニョーロ/フルクラムやマビックは無駄にスポークを軽くせず、スポークの剛性も考慮したホイール作りがされています。

だからこそ人気が続いているんだと私は思います^^

特に体重がある人・・・70kgをゆうに超えてくると、リアのスポークは28本以上あると良いと言います。

リムブレーキの完組ホイール達は、軒並みそれより少ないスポーク数で組まれています。

むやみに軽量化やエアロ効果を重視しすぎると、ホイールそのものの基本性能が低いものが出来上がってしまいます。

ディスクブレーキが普及し、リムブレーキよりも良く走るようになったと言われる要因の一つは、スポークの本数が増えた影響かもしれません。

ディスクキャリパーのストッピングパワーに耐えるために本数が増えているので「走りの良さ」が向上したのは副次的なものでしょうけど、ディスクブレーキホイールの方が良く走るのはそういった側面もあるのではないか?と予想しています。

実は冒頭のS5、リアホイールがフロントと違うのは、掛かりの良さの向上を狙ってリアのみ組み替えてもらっているからです。

さて、どんなホイールになるのやら・・・フフフ。

コーナリングの切れ込みは良好

S5はよく曲がります^^

ヘッドアングルが70.5度と結構寝てますが、前三角が硬めなので、そこを基点にバンクさせていく形になります。

ラインのぶれもありません^^

鈴鹿サーキットの下りで60キロ近いスピードで曲がっても、フレームが拠れてアンダーが出るということもないです。

タイヤ側のグリップ力が気になってくるほどです(笑)

実際シマノ鈴鹿ロードレースでは、1コーナーでリアタイヤが滑りましたし^^;

もっとカミソリみたいにスパスパ曲がれるセッティングにしたくなりますね。

フロントはカッチカチ リアバックが柔らかくアンバランスで急加速が苦手

タイトルの通りなんですが、S5はスプリントにはあまり向かない印象でした。

ダッシュを始める時、ハンドルを握ってペダリングに合わせて振っていくわけですが、フロント三角はしっかりしていてバイクを振りやすいんです。

 

問題は、フロントの動きとリアバックの動きが一致していない。

横に倒し込みながら加速する、ダンシングスプリントは特に苦手という感じです。

加速はしているんですけど、フレームが「ちゃんとパワー受け止めてるぜ!」的な手ごたえをあまり伝えてこないのです。

端的に言えば、ある程度不満が出ない範囲で柔らかい。

フロントとリアで剛性感に差がある、一体感が薄いのをはっきり感じます。

FOILから乗り換えて感じた、唯一にして最大の違和感です。

なぜこんなちぐはぐな感触が出るのでしょうか?

まずフロントから見ていきましょう。

S5はフロント三角が結構しっかりしています。

実際、初出のS5 VWDからヘッド剛性35%もアップさせたというこの二代目S5。

実はS5のトップチューブとチェーンステーは、当時のRシリーズ最高峰「RCA」と同じ設計がなされています。

フレーム重量660gと、超快適な乗り心地を達成した、あのRCAです^^

オールラウンダーなフレームの要素も取り入れているわけですから、そら進化します。

ダウンチューブのペラペラ具合も影を潜め、カムテールっぽさがある形状になったことから、フロント三角は剛性を高められているんだと思います。

一方で、公式発表ではリアバックについては剛性アップのアナウンスは一切していません。

当時のシクロワイアードの記事を見ますと、

しかし、空力性能の向上だけが新S5の進化ではない。剛性という側面においても、長足の進歩を遂げているのだ。使用されるカーボンファイバーの改良、そして100工程にも及ぶカーボンレイアップを徹底的に見直すことで、フォーク横剛性を17%、ヘッドチューブ剛性を35%、ボトムブラケット剛性を6%向上させることに成功した。

ということで、フロントの剛性アップは果たしているものの、リアバックは一切手を付けていないような内容となっています。

シートステーもエアロを意識しすぎてこんなに薄いです。

幅10ミリほど程度。

少なからず設計段階および試作段階でフレームの前後バランスの確認を行っているはずですが、硬くなったフロントに合わせてリアもバランス良く剛性変化させているならば、剛性至上主義な当時において、リアバックの剛性アップを謳わないのには違和感があります。

しかしながら海外レビュワーの記事を読み漁っても、リアの剛性について特に述べている人はいませんでした。

本当にリアバックは触っていない可能性があります。

 

ただ、そもそも論ですがエアロロードは”ハイスピードを長時間維持すること”が至上命題です。

トップスプリンターが発揮する1500Wとかのレベルに合わせてガッチガチに固めてしまったら、巡航で即座に脚が終了するバイクになること請け合いです。

エアロロードというと、トップスピードの伸びとか加速性とか、専らスピードに関わるイメージが付いて回りますが、高いスピードで走るにはそもそも高出力をキープするわけです。

ということは、硬いだけでは脚が売切れるので、ある程度のしなやかさも必要なわけです。

、、、と、S5がある程度の剛性で抑えてあっても良い理由を無理やり考えてみました(笑)

 

 

しかしながら私のこの感覚、あながち間違っていないようです。

S5のこの剛性感について調べていたら、イギリスの「Cyclist」というサイトのコラムを見つけました。

サーベロのバイクについて書かれていますが、その中にマーク・カヴェンディッシュが登場するシーンがあります。

‘Mark Cavendish was an arsehole,’ says Roy. The British sprinter rode Cervélo bikes at Team Dimension Data from 2016 to 2019. ‘It’s true, and he says he is too. But that was brilliant. He was never wowed by a shiny new bike, nor impressed by us being nice to him. He’d objectively analyse everything he used. The input he gave us is how we ended up with the stiffness-to-weight ratio of our current S5. He got on the previous generation, a really successful bike, and in no uncertain terms told us it was the worst bike he’d ridden for stiffness.’

意訳すると

「マーク・カヴェンディッシュはろくでなしだった」とロイは語る。
彼(カヴェンディッシュ)は2016年から2019年までチーム・ディメンションデータでサーヴェロのバイクに乗っていた。
「彼はピカピカの新しいバイクに驚いたり、私たちが親切にすることに感動したりすることはなかった。
彼は自分が使うものすべてを客観的に分析するんだ。
彼が与えてくれたインプットが、現在のS5の剛性対重量比に行き着いた理由だ。
カヴェンディッシュは本当に成功したバイクである先代に乗り、はっきりした言葉で、剛性に関しては今まで乗ったバイクの中で最悪だと言ったんだ。」

ということです。

カヴェンディッシュは一流スプリンターでありながら、機材についても他選手と一線を画すほど並々ならぬ拘りを持ち、かつ客観的な視点で状況やデータを分析できることで有名です。

つまりは頭が良いってことです。

プロでも客観的・論理的に機材を分析できる選手は本当に少ないと感じます。

そんな彼が「剛性に関しては最悪」と言っているということは、実際そうなんでしょう。

私の感覚とも合致します。

サーベロ的には「今のS5 Discがあるのはカヴェンディッシュの建設的な批評によるおかげ」としていますが、逆に今までそれ以外のプロ選手から何の不満も出なかったのか、不思議なところです。

 

とはいえ、あまりスプリントに向かないバイクであっても、スプリントやアタックはレースに付き物です。

なのでS5に乗り始めてから、「ギア比」にこだわるようになりました。

現状52-36Tですが、53-39Tに変更。

昔で言う「ノーマルクランク」と同じギア構成です。

通常、チェーンリングが大きくなれば、ペダルストロークに「重ったるい感触」がくっついてきます。

それが「掛かっている」という感覚の後押しにもなります。

「この勢いでペダルをぶん回したい」というストロークに100%しっかりバイクが追従してくる感覚を「掛かっている」と私は表現していますが、掛かりそのものは駆動に関わるパーツ全ての剛性が関与してくるわけです。

フレーム剛性はフレームが決まってしまえば変えられませんし、ホイールに関してもマージンを見た上での限界一杯までスポークを強くしてもらっています。

これ以上のホイール剛性アップは、マビック「コスミックアルチメイト」なんかにしないと無理。

あとは、過去に実施した実験から「チェーンリングの大径化」くらいしか余地はないです。

一度は踏み抜くときの硬さに負けて52Tに戻しましたが、そのうち54Tとかに戻っているかもしれません(笑)


【まとめ】

最後に、まとめ行きましょう!

今回のテーマは以下の通り。

【レビュー】Cervelo S5 2018リムブレーキ【エアロだけで突き進めるモンスター】 でした。

そして、本稿の結論は

ハイエンドモデルの割に剛性は今一つ、でもエアロ効果でゴリゴリ突き進む!

これですね^^

まあ正直なことを言えば、S-WORKSやDOGMA、MADONEといった、この価格帯を代表する有名フレームと比べると物足りない部分が目立ちます。

圧倒的なまでのエアロ効果と引き換えに、ロードバイクならではのきびきびした加速感がスポイルされている感が否めません。

メーカー名や造形に惹かれる人は多いと思いますが、基本性能に期待して買うフレームではないですね。

基本性能を優先するなら、同社の一つ下の「S3」が良いかと思います。

これは昔乗ったことがありますが、FOILよりスパスパ加速していく良いフレーム、という印象でした^^

ただしポジションの問題で買うのを諦めましたが・・・。

 

このS5を高速レースで使うには、コツが要りますね。

速いことは速いんですが、インターバルのシーンやコーナーからの立ち上がりには向きません。

長い直線からのゴールスプリントのように、ある程度速度が乗ったところから加速させる分には、剛性の低さが少し影を潜めます。

なので、如何にスピードを殺さないか。

これが鍵を握ります。

エアロロードらしく平地巡航しやすい塩梅の剛性に仕上がっていますので、パーツカスタムで大化けする可能性を秘めています。

今となっては買えない絶版フレームですが、カスタムの幅は広がりますね^^

私はピンポイントで踏んでいくペダリングの癖の都合上、フレームが硬すぎると脚が耐えられないので、S5の剛性感は気に入っています。

 

以上、参考になると嬉しいです^^

それでは今日も、ありがとうございました!

 

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