【SUPLEST】スイスが誇る”精密シューズ”【日本再上陸!】

こんにちは、コウです^^

それでは今日も元気よくやっていきましょう!

本日のテーマはこちら。

【SUPLEST】スイスが誇る”精密シューズ”【日本再上陸!】

こういうテーマでやっていこうと思います^^

今年の5月、スペシャライズド「S-WORKS ARES2」を購入しました。

この当時はまだ定価を引き上げる前だったので、そこまで高いシューズだと思っていなかったのですが、夏ごろに急に7万近いプライスタグに変わりましたね。

まあ5万円台で買えたのが異常とも言えるほどのコストパフォーマンスだったわけですが、それでも一気に1万以上の値上げはやり過ぎではないかと思うくらいです。

 

そんな、今シーズンのほとんどを一緒に過ごした相棒、S-WORKS ARES2。

先日、手放しました。

私にとっては革命的なシューズだったのは事実です。

BOAダイヤルをどんなに締め込んでも足が痛くならない、そして足をがっちりホールドしてくるアッパー構造。

もうこのシューズ以外、選択肢は無い。

本気でそう思ったのですが・・・死角から刺客が飛び込んできました。

SUPLESTです。

スイスのシューズ専業メーカーで、かのTTスペシャリスト兼ルーラーとして知られるスイス人元プロ選手、「ファビアン・カンチェラーラ」がアンバサダーを務めています。

そのハイエンドシューズである、

 

ROAD PROをレビューしたいと思います!

紐シューズから履き替えさせたほど気に入っていたARES2を手放してしまったほどのシューズです。

一体どんな特徴を持っているのでしょうか?

私なりに気になったポイントも交えて紹介していこうと思います!

ぜひ参考にしてみて下さい!


【私の足のスペック

  • 母指球~小指球の幅は105ミリ(幅広め)
  • 周長で言うと約255ミリほどある
  • 甲は平均値ほど高くはない
  • 足の全長は座位で255~256ミリ(立つと2~4ミリ伸びる)
  • 親指と中指の長さが揃っている「スクエア足」(若干人差し指が短めか)→人差し指が長い「ギリシャ足」
  • 土踏まずが低く偏平足気味(土踏まずの周囲に筋肉が付いているからという見方もある)

昔、私の足はスクエア足と書きましたが、実際は「ギリシャ足」でした

ギリシャ足とは、人差し指が長い足型のことを指します。

舟状骨が少し出っ張っている

しゅうじょうこつ と読みます。

ここですね。

私の場合、特に左足が少し出っ張り気味です。

このせいで昔からある、左右のアッパーを丁度足のど真ん中に寄せて閉じるような締め方をするBOAダイヤルシューズを履くと、レースガイドの固い部分が骨に被さってよく痛みます。

こういうシューズは基本ダメです。

なので、アッパーのレースガイドがオフセットしたものを今まで選ぶ傾向にありました。

右足の小指の骨が左足のそれより大きい

利き足の影響もあると思います。

高さを比べると分かりやすいのですが、右の方が骨が大きいことが分かっています。

これのせいで、アッパーの小指側が低めに作られているシューズを履くと、小指がだんだん痺れてきます。

体重がかかると足の長さが伸びやすい

座位と立位で、足は伸び縮みします。

勘の良い方なら、なんとなく日常生活で実感していらっしゃるかもしれませんね^^

少し前にオーダーメイドのスニーカーを作りに行ったのですが、その時に足の状態を調べてもらいました。

座位ですと、両足共に255か256ミリ。

ですが立つと、右足は2ミリ弱伸びるのに対し、左足は3~4ミリ程も伸びるそうです。

曰く、足を構成する200個ほどの骨の動きが柔軟だと、足が伸びやすいそうです。

足首の可動域が広すぎる

その場にしゃがみこんで体育座りが普通にできます。

歳をとると、足首、アキレス腱の伸びが悪くなって踵が浮いてしまう人が多いんですが、普通に足裏を全部地面に付けられます。

 

 

・・・と言った感じですね。

総合すると、「母指球と小指球が広く、つま先がトゥボックスに接触しやすい可能性が高い足」ということです。

サイクリング中に足が伸びるほど片足に過負荷がかかる状況ってあるのか?

とお思いの方もいるかもしれませんが、唯一あります。

ダンシングしている時です。

なのでこれまでの傾向から考えますと、ダンシング=前かがみの片足立ちでつま先が接触しないサイズをずっと選んできたのです。

本来ならシマノでもスペシャライズドでも40.5が適正なんですが、つま先の自由度を考慮し41を履いてきた、という経緯です。


【SUPLESTとは?

そもそもの話ですな。

SUPLEST(スープレスト)ってどこのメーカー?

って方のために、簡単に紹介します。

 

冒頭でも紹介しましたが、スイスのシューズ専業メーカーです。

今年やってきた新参者ではなく、元々2012年から2016年まで日本に代理店があったんです。

当時は確か、「EDGE3 PRO」というシューズが、最後に入手できたSUPLESTのハイエンドモデルだったと思います。

まだBOAダイヤル「IP1」というでかいでっぱりのダイヤルが流行っていた頃のシューズで、クリート穴が前後ではなく横にスライドできうるという珍しい穴の開け方を採用していました。

他のBOAダイヤル採用シューズと明確に異なる点は、「Carbon Shield」と名付けられた薄いカーボンプレートをアッパーに仕込んでいる点です。

BOAの細いレースってワイヤリングをどう工夫しても、薄いマイクロファイバーのアッパーの上に装着されている以上、がっちり締め込んでいくと行き着く先は、「線」でアッパー素材に食い込んでいきます。

その状態で足首を返す「アンクリング」動作を行うと、BOAのレースに押さえつけられたアッパーが足首の筋に食い込んでとんでもなく痛くなる、という不快感に繋がります。

あと足首の可動域に制限が掛かるので、単純にペダリングのバリエーションが減ります。

私はこの現象がとても嫌で、だから紐シューズを使い続けてきたという経緯があります。

SUPLESTは10年以上前の時点でこの事実に気づいており、BOAレースの下にカーボンの薄いプレートを仕込むことで、ダイヤルを締め込んだ時にアッパーの固定が「線」ではなく「面」で押さえつける働きをするようにしたのです。

まあ、こんな凝った作りをするくらいだから当時でも48000円というとんでもプライスを引っ提げていましたね。

結構お高いメーカーなのは昔から変わりません。

 

そんなSUPLEST、2017年に日本を撤退したのですが、今年カムバックを果たしました。

名古屋に拠点を構える「井元産業」という会社が代理店を担当しています。

現在SUPLESTはプロチームにも供給しており、カンチェラーラがオーナーを務める「TUDOR PRO CYCLING」が使っています。

他にもトラック競技の女子日本代表である梶原悠未選手も使っているなど、ハイパワーであることが前提の種目においてもシューズ性能に不満が無さそうなことが分かります。


【S-WORKS ARES2の問題点

さて、ROAD PROのことを書く前に、先にS-WORKS ARES2(以下、ARES2)で浮き彫りになった問題点を先に書いておきます。

なぜ買い替えるに至ったのか?

私はずっと、SOLESTAR BLKシリーズというインソールを愛用しています。

このインソールが、今までずっと悪さをしていたのです。

SOLESTARインソールの特徴といえば、カーボンコアを踵部分に用いることで、足がペダリング動作中に内旋することによって発生するペダリングロスを抑えた設計になっています。

ですがこのカーボンコアが曲者で、シューズによってはアッパー生地を外へ押し出してしまいます。

過去に所有していた、初代S-WORKS ARESの右足用シューズです。

左がSOLESTARインソール、右側が純正インソールをそれぞれ入れた時の写真です。

左側の写真では、足の内側のアッパーが少し外に飛び出しているのが見られます。

それだけSOLESTARインソールは踵周りが広いわけで、最近の「踵に向かって狭くなっていくシューズ」にこれを入れると、カーボンコアがアッパーを押し広げてしまうのです。

これが何を意味するかというと、足とシューズの間に「隙間」を生み出す要因になるのです。

実例をお見せしましょう。

今回、ROAD PROを履くために新たなインソールを用意しました。

松本義肢製作所の「FUSION-FLEXI SPRINT」というインソールです。

このインソールを選んだ理由は後述します。

右足にSPRINT、左足にSOLESTARを入れてみます。

買った当初からSOLESTARを入れて走っていたシューズなので、アッパーはフリー状態で既にSOLESTARの形状に馴染んでいます。

足を入れました。

左足だけ血に見えそうな色の汚れが付いていますが気にしてはいけません。

この時点で既にどこがおかしいか気づいた方は、相当なシューズマニアですね(笑)

さて、どこがおかしいか分かりますか?

 

正解はここ。

指が入っている箇所です。

アッパーのタンと足の間。

ここに指一本すっぽり入るほどの空間ができてしまっています。

実はこれが少し気持ち悪いと感じていたのですが、基本的に足の引き上げは踵、踏み込みはソール形状が担うと考えていた半年前の私にとって、ここの隙間の存在について大して重く考えていなかったのです。

パワー伝達は、足の裏から発生するもの。

足の甲が多少空いていても問題はない、という判断でした。

 

しかしながら、隙間があるということは常に「その空間の分だけシューズとリンクできていない」ことを表します。

常にライドのどこかで、BOAダイヤルをもっと締める必要性に駆られていました。

当然走りだす前にBOAダイヤルはしっかり締めますが、ダイヤル自体の回転が止まるまで締めたという事実は、足がしっかり固定されるまで締められたことを示すわけではないのです。

これは別問題なのです。

事実、ARES2で走っている時は、足が浮ついている感じが拭えませんでした。

でもスプリントしてみてもそこまで足がずれる事も無いため、ARES2の設計の秀逸さのおかげとばかり考えていました。

いや、上からしっかり固定されていなくても足がずれないから、ある意味秀逸な設計と言えますね。

 

ちなみにこの時点で

ARES2にSPRINTインソールを入れて使い続けたらよかったのでは?

と考えたのですが、それもまた難しい話でして。

ARES2はただでさえ現代のレーシングシューズの中ではかなりの大空間を有しており、SOLESTARインソールを入れてようやく丁度いい容積になります。

そこに薄いインソールを入れると、さらに容積が増えます。

で、ARES2で問題なのが、つま先のBOAダイヤルを締めるとアッパーに皺がよるんです。

これはSOLESTARインソールの時点でわずかながら既に起きていたことです。

これ以上薄いインソールを入れると、皺がさらにより、フィット感に悪影響が出ることが容易に想像されます。

もちろんお試し済みです。

ARES2はSOLESTARインソールの盛り上がりがあって丁度いいサポートになる時点で、「シューズ自体の」土踏まず付近のサポート性は皆無に等しいため、SPRINTインソールを入れると足が内側に思いっきり倒れ込みます。

なので、この案は個人的に没でした。

 

そんな経緯があって、ROAD PROへの乗り換えを決意したのでありますな。


【ROAD PRO、大解剖

それではここからは、ROAD PROのシューズとしての構造を見ていきましょう!

純正インソールは交換推奨

純正インソールはこちら。

「SOLESTAR」の名前が入っていますが、それもそのはず。

ROAD PROはSOLESTARと共同開発しており、インソールもSOLESTARと同じテクノロジーが詰まったものを奢っているのです。

しかし、素材はKONTROL2やBLK2・・・どころかTOURとも異なり、ただの発砲ウレタンです。

これがやたら分厚く、手持ちのBLKと比べても厚みが1.5倍くらい違います。

こんなに違うと足が入る容積がとても小さくなるので、今回このシューズのために違うインソールを用意しました。

それが先ほどから出てきている、このインソールです。

シューズの設計上、最終的には本家SOLESTARインソールを入れた方が良いと予想されますが、果たして?

シューズの構造を解説

カーボンプレートは今回も健在です。

BOAのレースが当たる箇所からBOAダイヤル台座までしっかりサポートされており、BOAダイヤルの締め込みによるアッパーの引っ張り剛性の向上に寄与しているものとみられます。

さて、多分皆さんが気になるポイントで常に上位に入る要素かと思います。

「シューズの幅」について。

ROAD PROのシューズ幅自体は、外から測定した限りではシマノノーマル、スペシャライズドノーマルと同程度です。

ワイド幅は現時点では存在しません。

しかし、写真の通り母指球と小指球が当たるアッパーサイドには「FLEX ZONE」とSUPLESTが呼称する、アッパー素材とは別の非常に柔らかい素材が当てが割れています。

私は足幅が広い方ですが、これがあるおかげで痛みを軽減してくれています。

断定は難しいですが、少し幅広な足くらいなら余裕で入るでしょう。

ヒールカップについて。

外側は硬質な素材で覆っており、ホールド感を生み出しています。

実際に足が触れることになる内側は、アキレス腱を広範囲で包めるようにクッションを厚めに配置しています。

それに加えて、踵を包み込む形状をしていますね。

最近はS-WORKSやシマノが異常に踵をホールドする設計なので、この二社に慣れた脚の持ち主たちは、少し物足りなさを感じるかもしれない。

私も最初はそうでした。

でも「頑張ったらすっぽ抜けるかも」と思わせるほど緩いわけでもなく、握力が弱いながらもしっかり掴み続けてくるような印象です。

ちなみに滑り止めの類はありません。

某チャンピオンが使うシューズメーカーは上位モデルに対しほぼ必ず滑り止めのグリッパーを使っていますが、あれは経年劣化で接着が取れたりグリッパーがボロボロになるなどの弊害を生みます。

なので無い方が長期使用した際に精神衛生上よろしいと思います。

アウトソールは少し反りが入った形状をしています。

反りが入ったアウトソールは、私的には大歓迎です。

なんとなくですけど、26cm程度の小さめな足の場合、少し反っていた方がペダリングの返しがやりやすくなると考えます。

最近のフラットなソールは、足の大きい外国人向けの設計じゃないかなと思うばかりです。

BOAダイヤルはLi2を2つ備えています。

ゴム製なので色を変えることが可能です。

サイズ展開が少し難あり

続いて、ROAD PROのサイズ展開についてお話します。

今回入手したのは、41サイズになります。

42以下のサイズは1サイズ刻みで飛んでおり、ハーフサイズは42.5から登場します。

元々が、足が大き目な人向けのシューズだからですかね。

 

で、実はこのサイズ感が、今回SPRINTインソールを使うことになった要因でもあります。

最初に足を入れたのは、41です。

ドレスシューズっぽい見た目をしていますが、意外と足型だけでなく指のカーブに対してもきっちりフィットします。

その状態から母指球~足指に体重を乗せてみると、つま先がトゥボックスに少し干渉しました。

それを解消したいので41.5がほしかったのですが、無いので次に42を履いてみたら、私の足にとってはヒールカップの作り自体がゆるゆるで、さらにBOAダイヤルを締めきっても足が浮くし踵が緩いという。

そんなジレンマにぶち当たったのです。

まあそんな状況になったら、普通は買うのを諦めると思うんですよ(笑)

でも私は中のインソールが気になったので、取ってチェックしてみたんですね。

これのことです。

よく観察した結果、純正インソール自体がかなり厚い事が分かったため、インソールを薄手のものに変えれば小さいサイズでも問題ないと考えたんです。

これは他のシューズにも使える小ネタですが、欲しいシューズがギリギリ履けそうなサイズ感だった場合、インソールを薄いものに変えれば内部容積が僅かに増えるので、履けることがあります。

そんな経緯もあって、無事41サイズを購入しました。

今回SOLESTARではなくSPRITNインソールを買ったのはそれが理由です。


【ROAD PRO インプレッション! 「密着」という言葉がこれほど似合うシューズはない

では、インプレッションに入ります。

200キロほどの使用なので、耐久性などはまだまだ未知数です。

それでもこのシューズの良し悪しを語るには十分な距離だと思います。

SOLESTARインソールが不要になった

最も驚くべき発見は、今までなければならないと考えていたSOLESTARインソールが要らなくなったことです。

シューズサイズとインソールの厚みのお話をしたので

SOLESTARが単純に厚いから不要になっただけでは?

と捉えられると本筋と違うので、しっかり書いておきます。

 

そもそもこのシューズ自体、土踏まずの辺りが少しだけ盛り上がった作りになっています。

ミドル~ローアーチな土踏まずを持つ私ですが、ぐりぐり刺激してくるほどではないです。

そこまでサポート力のないインソールを使っても、土踏まずが多少持ち上がるように設計されています。

まずこれが大前提。

 

本家SOLESTARインソールは社外インソールの中では厚い方ですが、厚み的には問題なく使えます。

それ以上に問題となったのが、カーボンコアの盛り上がりが足を攻撃してきたのです。

いつもなら

足の位置がハマって気持ちいい~

となるはずなのに、なぜかこのシューズにおいては異物感が強い。

その状態でペダリングすると、ツボ押しで超痛いところを押された時みたいな痛みが出てきたので、即刻使用を中止。

何が起きたかというと、インソールの位置が足の外側に寄ったような感じになったのです。

踵部分のカーボンコアが、思いっきり土踏まずの下に来た感じ。

違和感ありありでしたけどとりあえずその状態で慣れるかな?と思って走ろうと思ったんですが、まずその場で立った時点で凄い違和感。

土踏まず全体がカーボンコアの上に乗っかっているような・・・?

こうなった要因は、先ほど書いた、シューズ側で既に土踏まずが持ち上がる設計に由来していると考えられます。

 

本来なら必要だったはずのサポートが逆に拷問器具に変わってしまったため、すぐにSPRINTインソールに交換。

こっちの場合どうかというと、土踏まずから甲にかけて綺麗に隙間なくラッピングされる形でアッパーに包まれます。

アッパーの動きを妨げるものが何もないので、当然と言えば当然ですが。

むしろこっちの方が、ROAD PROが持つ真の一体感を感じられるんじゃないかとすら思います。

ダイヤルを軽く締めれば、ほとんど完璧にフィットする

本シューズのトピックの一つ「アナトミックラップ」

シマノで言うところのサラウンドラップに近いものですが、シマノは帯のような形のしなやかなアッパーで甲を押さえ込む形になります。

アナトミックラップの真骨頂は、

  • カーボンプレートがもたらす「BOAダイヤルの締め込みにより加わる圧力の均等化」
  • 一枚の生地で足を包むことによる「部分的に締まりすぎる現象の緩和」

にあります。

他のシューズは、足の甲が痛くならないようアッパーにはしなやかな素材を採用し、アッパーのカッティングによって甲を押さえています。

しなやかな素材は一見すると良いように見えますが、伸びやすいというデメリットがあります。

とはいえ、固い素材だったらそれこそ圧が一か所に集中し痛みが発生しやすいため、綺麗に足型をトレースする必要があります。

加えて、BOAのレースが素材上に食い込むような通し方をするシューズは、レースそのものが足の可動域を妨げてしまいます。

 

SUPLESTが採用するカーボンプレートは指二本分の幅を持っており、締め込んでいっても皺がよることなくその形を保ったまま足の甲を包んでいきます。

そして親指側を覆う一枚物のアッパーによって、一切の皺なく足を包み込むことを可能としています。

しかもカーボンプレートはUDではなく綾織されたクロスを使っているため、あらゆる方向からの力に耐えることが可能です。

例えば、足がペダリング中にアッパーを色んな方向へ荷重しますし、BOAダイヤルがアッパーを引っ張る方向にテンションが掛かります。

こういったところへの設計の細やかさが、優れたフィット感を生み出していると考えられます。

ペダリングが変わる、踏める時間が伸びる、楽になる

ここからは、実際にライドしてみた感触について述べていきます。

いきなり魔法のような言葉が並んでいますが、私の場合これまでの経緯もありますから、冷静にお読みください。

 

まず、ペダリングの仕方が変わりました。

一番変化が大きかったポイントは、上死点の通過時。

ここを抜ける時に、足を前へ蹴りだすようにペダルへ力を伝えることが可能になりました。

もっと正確に言うと、カーボンコアが無くなったことで足を前へ蹴りだせるようになったのです。

「足を前へ蹴りだす」

押し脚という表現もありますが、ペダリングの解説記事や動画で、この言葉よく聞きませんか?

実は私、今までこの動作をどうやればいいのかよく分かりませんでした。

思えば、SOLESTARインソールを使いだして、パワー伝達を踏み足の方向にばかりかけるようになってからですかね。

 

今でこそSOLESTARインソールは、これに交換するだけで「平均出力が6.9%アップ」という、あたかも驚異的なパフォーマンスアップを期待できるような宣伝文句・触れ込みばかりが目立ちますが、私がこのインソールを導入したきっかけは別のところにあります。

母指球、小指球、かかと部を1つのカーボンコアでつなぐ”スタビリゼーションデルタ”がもたらす、踏み下ろす際の「足の安定性」が欲しかったからです。

このインソールに出会った当時はBONT VAYPORを使っていました。

今のBONTは分かりませんが、この当時のBONTシューズは土踏まずがことさら低い作りでした。

なので、ローアーチな私でも土踏まずに空間ができており、特にトルクが掛かっていない場面でさえ不用意に足が潰れてしまう経験を何度もしていました。

それを補正したい、あわよくば足全体を使ってパワーをペダルに乗せられるインソールが欲しいと思った時に出会ったのが、SOLESTARインソールだったのです。

当時の私からしたら、まさに白馬に乗った王子様!理想の結婚相手ですよ(笑)

そこから、10年近くに渡ってSOLESTARインソールを愛用してきたのです。

使い過ぎてカーボンコアがへたってしまったこともあり、買い換えてもいますしね。

 

しかしながら、今回SOLESTAR以外のインソールを使ってみて、気づかされました。

カーボンコアがあるのとないのとで、ペダリングにおける足の軌道が全く変わることに。

どこが一番変化が大きかったかというと、「上死点の通過」です。

SPRINTインソールに変えた、というかSOLESTARインソールを抜いたことで、ここがとても楽になりました。

 

SOLESTARインソールを使った時は、上死点を越える時に膝を持ち上げることに一生懸命になっていた自分がいました。

そう、上死点を越えることに一生懸命になる一方で、脚が繰り出す力をペダルに与えることができなかったのです。

何が起きていたのか?

写真を見てもらうと分かる通り、SOLESTARインソールは凄く端的に言えば「踝の位置」が少し持ち上がる格好になります。

すると、連動して膝が少し持ち上がるんですね。

だけど、パワーをいの一番に伝える母指球の真下にはカーボンコアが無いので、ここだけスタックハイトが下がります。

実はここがSOLESTARインソールの凄く厄介なポイントであるということを、このシューズを使って初めて気づきました。

SOLESTARインソールの説明書では、「慣れるとサドルが数ミリ上がります」というニュアンスの説明書きがあります。

しかしながら、サドル高さって厳密に出せている人ほど、母指球と座面との距離感が大事になってきます。

私の場合ですが、SOLESTARインソールを入れてもサドル高さは変わりませんでした。

何故かというと、カーボンコア分インソール自体は厚いものの母指球の位置が下がるので、結果的に一番力を入れやすいサドルとの距離感に影響が無かったからです。

でも、踝から繋がって膝の高さは全体的に持ち上がったままです。

この状態でペダリング中に脚が上死点付近に来ると、意識の上では「脚が上がり切ったから、次は前へ送り出す」という動作をしたいのに、実際問題踝~踵はもう少し上げないとスムーズに上死点を通過できない

元気なうちは余分に腿上げできますが、当然脚は、無駄に疲れます。

そして極めつけは、疲れてくると膝を上げられなくなるので、上がらない分踵を下げてしまう事になります。

でも足は前へ送らないといけない。

となると、今度は足首が詰まります。

でもトルクは掛かっていないので、上死点を越えたら即座に踏まないといけないので、瞬間的に高トルクになるから余計に疲労が溜まっていきます。

・・・という、悪循環がずっと今まで続いていたのです。

ある時から「心拍数にはまだ余裕があるのに脚がすぐ売り切れている」という状況が続いていたのですが、実はインソールに原因があったのではないかと今は考えています。

 

SPRINTインソールを使ったら、これらの悩みから一気に解放されました。

上死点を越える時に邪魔だったカーボンコアが無くなったため、脚を高く上げる必要が無いので、スッと足を前へ送り出せるのです。

とても気持ちのいいペダリング感覚を得られたのですが、これはSOLESTARインソールに慣れた足じゃないと経験できない領域かもしれません^^;

また、上死点通過の前後で前へ足を送り出せることから、もっと長い距離を踏めていることになるので、同じパワーを出し続けてもSOLESTARインソール使用時よりも相対的に楽に感じられます。

例えば、ペダリング中のパワーの平均出力が200Wと表示されているとします。

パワーとは本来、トルクと回転数の積で求められます。

ただし、ここで言うパワーはペダルが一回転する中で発揮された平均トルクと解釈できます。

つまりペダルの軌道の中で、

  • 長い距離を踏めずに瞬間的にピンポイントで大きなトルクを発揮する=SOLESTAR
  • 長い距離を踏む代わりに相対的に低いトルクを出し続ける=SPRINT

この両者は、ペダル一回転という条件で観測すると、トルクの平均値は同じになります。

トルク変動が小さいのは後者、つまりSPRINTインソールを入れた状態です。

なので、踏めるし持続時間も伸びたけど、なんか楽。

今はそんな状態です。

意外と300W、400Wって結構踏み続けられるんだな~

って感覚です、はい。

美山ロードまでにこのことに気づいていたら・・・。

スプリントで大事なのは、踵じゃなかったらしい

個人的に一番ショックだったことです。

ぶっちゃけROAD PROの踵のホールド性は、シマノRC9やS-WORKSシューズに比べるとプアです。

最初履いてみた時は

え?これでトラック選手が納得すんの??

と疑ったほどです。

スプリンターの上澄みである彼らが好むというから期待したのですが、拍子抜け、肩透かしもいいところでした。

 

だけど、スプリントしてみたら、まあ不思議なものでして。

アナトミックラップのおかげか、BOAダイヤルをきゅうきゅうに締めずとも、足が浮いてこないんですよね。

それどころか、ARES2でも少し足が浮くシーンがあったというのに、ROAD PROはその時より足を思いっきり引き上げてもシューズがちゃんと付いてきます。

何この子?

足の包み方を精緻に研究すると、こんなに良いシューズが生まれるという事実をまざまざと見せつけられました。

物理的には軽くないけど、説明できない”軽いペダリング”がそこにある

ARES2ユーザーにとってはあまり良い話ではないですが。

S-WORKS ARES2って、結構軽いです。

あんなゴテゴテとした見た目ですがシューズ単体で263g前後です。

逆にROAD PROはあんなにシンプルですが、272g前後。

インソールが変わったとはいえ、劇的な軽量化は見込めません。

TORCHとかRC9の方が軽いくらいですし、手持ちだとSUB6なんかSOLESTARインソール込みでROAD PRO単体の重量に匹敵します。

でも・・・不思議とペダリングが軽いんですよね。

足とシューズが、ぴったりくっついてる感じなんですよ。

余計な力みが無くなって、脚を上下することだけに集中できるんです。

このシューズに履き替えてから、

こんなに気持ちよくペダリングできるんだ

っていう事実に何度も驚かされています。

生産拠点が、台湾

これはこのシューズを見た瞬間に思いました。

マジで?中国じゃなくて台湾?

意外な生産拠点だと思いましたか?

S-WORKS系であっても、生産は中国の工場で行われています。

実はSUPLESTのシューズは、某有名メーカーのランニングシューズも製造する工場で製造されています。

品質管理に厳しい工場らしく、そこら辺のハイエンドシューズよりも丁寧に作りこまれています。

ハイエンドなのに中国製・・・

そんなちょっとしたがっかり感、このシューズには無用です。

ちょっとどころじゃない、価格の高さがネックか

2025/12月時点で、本シューズの国内定価は72000円。

実は来年、さらに値上がりすることが決定しています。

価格で迷っているならば、むしろ今月がラストチャンスかと。

冬のボーナスが出たそこのあなた(誰のこと?)、安い今の間にこそ買っておいた方が良いと思いますよ。

 

と思って他のメーカーものぞいてみた限り、意外と70000円まではいかなくとも結構高いシューズが多いですね。

  • シマノ RC9 RC903 54,450-
  • スペシャライズド S-WORKS TORCH REMCO 77,000-
  • スペシャライズド S-WORKS ARES2 69,300-
  • SIDI SHOT3(NEW!) 65,000-
  • TREK RSL KNIT 59,900-
  • LAKE CX333 69,300-
  • fi:zi’k VENTO VEGA CARBON 68,000-
  • GIRO IMPERIAL2 64,900-
  • BONT VAYPOR SL 71,500-

人気メーカーと殊更高いメーカーのシューズを挙げてみました。

意外とROAD PROの価格に近いシューズはあります。

・・・いや、あるからって、SUPLESTの価格を肯定するわけではありません。

しかし、無駄に高い素材を使ってみたり、やたらブランド料を乗せたりしているメーカーと違って、「足のことをしっかり研究して、丁寧に作りこんだシューズがこの値段に収まっている」と考えた方が、精神衛生上よろしいかもしれません。


【まとめ】

最後に、まとめ行きましょう!

今回のテーマは以下の通り。

【SUPLEST】スイスが誇る”精密シューズ”【日本再上陸!】 でした。

そして、本稿の結論は

このシューズは他の人には使ってほしくない・・・

これですね^^

ARES2の時と同じ感想ですが、インプレッションするだけしておいて、「お前らは使うな!」とはこれ如何に(笑)

もっと値上げしてくれと思うくらいです。(考え方がセコイ)

でも、そのくらい良いです。

 

ARES2は、BOAダイヤルを締め切っても足が痛くならないシューズでした。

しかしながら、締め切らないと私の足にとって適切なフィット感を得られないということでもありました。

ROAD PROは、軽く締めただけで足の動きにしっかり追従してきてくれる、初めてのシューズです。

もう一足買いたいですが・・・流石に財布が持ちません。

 

以上、参考になると嬉しいです^^

それでは今日も、ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

error: Content is protected !!